答えを、建てる。
北野の仕事

百合居橋 (橋台・橋脚)

  • 長野県
  • 橋梁・鉄道

雪解け増水被害にあいながらも、徹底した管理で期限内に完成

施工現場のある栄村では、千曲川の増水で落橋が懸念されていた百合居橋に代わり、掘削と沈下を繰り返すニューマチックケーソン工法で橋脚の施工が進められた。しかし、日本有数の豪雪地帯での躯体構築に加え、強固な転石の掘削や度重なる増水など、想定外の難工事となった。

台風被害にあった地域のくらしを守る

令和元年の東日本台風(台風19号)により、「百年に一度」の確率を上回り千曲川の水位が上昇、長野市赤沼地区では堤防が決壊した。長野県最北端に位置する栄村箕作及び月岡地区では、堤防越流による浸水被害を受けた。
百合居橋(1960年竣工)では、橋の桁下まで増水し、流木などで押し流されてしまう危険性があった。災害を受けて、まずは堤防のかさ上げ、そして百合居橋を架け替えることとなった。現百合居橋の下流側に新たに右岸側に橋台を1基、そして川の中央にはニューマチックケーソンという圧気工法で橋脚を構築する工事が始まった。

厳冬期の川中で行われた、ニューマチックケーソン工法

ケーソンとは函(はこ)という意味で、地中の作業室に空気を送り込み圧力で水を排出した状態で川底を掘削し、躯体を下げていく。逆さにしたコップを水のなかに入れ、コップ内の空気を保つのと同じ原理だ。
圧縮した空気を休みなく送り込み、作業室に人が入って川底を掘削する。千曲川は大きな石が多く、発破で砕いてからバケツに入れて排出する必要があった。ケーソン内は圧力が高く、作業員は入る前に加圧し、出るときには減圧する必要がある。1日3交代、24時間体制で作業が続けられた。

異常気象への対応や作業員の安全を確保

橋脚の作業期間は川の水位が下がる11月から5月の渇水期に限られるが、日本でも有数の豪雪地帯に加えて、天候の悪条件が重なった。異常気象で1期目の終わりと2期目にも想定外の増水があり、常に上流の降雨状況を把握しながらの復旧には、大きな時間を要した。
しかし、最も注力すべきはケーソンに入る作業員の安全確保であり、掘削で橋脚が傾いたら、戻すには潜函職人の経験値に頼るしかない。他にも非常用の発電機や、救護用のホスピタルロック(再加圧機)も用意し、万全を期して工事が進められた。

北野の答え 予期せぬ自然の脅威を「安全力」で乗り越える

冬場には鉄骨の仮設屋根をかけながら、雪が降り積もる中で橋脚の躯体構築を進めた。県内北部の雨水が集中する場所であり、遠く離れた上流の降雨にも細心の注意をはらい、地域住民のために24時間体制で安全かつ綿密な工事を徹底。結果、工期内で無事に完了し、地域の安全を守る工事は橋桁の工程へと引き継がれた。