北野の仕事
ホテル ドゥ ラルパージュ

施主の感性と誠心誠意向き合い、これまでにない「本物」を創る
長野県の高原地、蓼科の森に佇む「ラルパージュ(夏の高原の牧草地)」と名付けられたホテル。幼少期からフランスで過ごした施主が目指したのは、心地よい上質な日常。イメージやこだわりだけではなく、体験から醸成された空間は、常に寄り添う姿勢の施工で実現された。
時間をかけて作り込まれたホテルの内外装

雪が残る林道を抜けると、青空に映える銀色の屋根が見えた。冬期休業から明けたばかりの「ホテル ドゥ ラルパージュ」に入ると、凜とした空気のなかに温もりが感じられる。天井は特殊な材料で下塗りをして、少しざらざらとした質感を出してから塗装されている。壁にはイギリスのファロー&ボール社の塗料を採用。納期が6ヶ月かかるため、工程を調節した。内開きの窓はモックアップを作って確認し、日本の気候に合わせて網戸も収められている。

手仕事の跡や修繕も建物の一部、それがホテルの歴史となる

室内の心地よさは、施主の戸部浩介氏がフランスでの生活で感じたものを、材料や施工を吟味しながら具現化した結果だった。それはときに施工のセオリーをも覆した。
極寒のなかでの打設は、これまでの実績で良質なものができるが、ひび割れ誘発目地やシーリング材は使わないでほしいという要望があった。そのため、壁には石膏ボードを使わず、コンクリートに直接塗装をしている。屋内を歩くと、壁面の塗料に反射した淡い光で、微細なゆらぎに気付かされる。

本質を見極めて、上質な風景を創り出す

ステンドグラスの外光を受けて、螺旋階段の曲線が映し出される。この手すりには平滑な部分がない。施主が用意していた膨大な資料に描かれていたのは、美しい曲線の螺旋階段ばかりだった。工場で組んだ階段を確認し、ノックダウンして搬入。さらに現場で手すりを曲げながら取り付けられた。
北野の答え 選択肢を増やす「提案力」で向かい合う
施主の要望に対して誠心誠意に向かい合うこと。天井のモールディングも、微妙なカーブを何度も提案し、施主と共に検証しながら仕上げた。まずは信頼を得る。いつもそこから、北野建設の仕事がはじまる。