答えを、建てる。
北野の仕事

ホテル ドゥ ラルパージュ

  • 長野県
  • ホテル・リゾート・保養施設

施主の感性と誠心誠意向き合い、これまでにない「本物」を創る

長野県の高原地、蓼科の森に佇む「ラルパージュ(夏の高原の牧草地)」と名付けられたホテル。幼少期からフランスで過ごした施主が目指したのは、心地よい上質な日常。イメージやこだわりだけではなく、体験から醸成された空間は、常に寄り添う姿勢の施工で実現された。

時間をかけて作り込まれたホテルの内外装

熟練の左官職人が手掛けたロビー周辺の天井。アーチ状に打設された躯体は、柱の角が綺麗な弧を描き、天井で消えている。

雪が残る林道を抜けると、青空に映える銀色の屋根が見えた。冬期休業から明けたばかりの「ホテル ドゥ ラルパージュ」に入ると、凜とした空気のなかに温もりが感じられる。天井は特殊な材料で下塗りをして、少しざらざらとした質感を出してから塗装されている。壁にはイギリスのファロー&ボール社の塗料を採用。納期が6ヶ月かかるため、工程を調節した。内開きの窓はモックアップを作って確認し、日本の気候に合わせて網戸も収められている。

12の客室のうち、2 部屋用意されているスイートルームのリビング。天高3mの室内にあわせた内開きの大きな窓が、特別な居心地の良さを与えている。

手仕事の跡や修繕も建物の一部、それがホテルの歴史となる

天高8メートルのトップライト。天井のカーブが光を受けて、ロビーを柔らかに包み込む。壁面の色や質感が館内に点在する絵画と調和している。

室内の心地よさは、施主の戸部浩介氏がフランスでの生活で感じたものを、材料や施工を吟味しながら具現化した結果だった。それはときに施工のセオリーをも覆した。
極寒のなかでの打設は、これまでの実績で良質なものができるが、ひび割れ誘発目地やシーリング材は使わないでほしいという要望があった。そのため、壁には石膏ボードを使わず、コンクリートに直接塗装をしている。屋内を歩くと、壁面の塗料に反射した淡い光で、微細なゆらぎに気付かされる。

エレベーターの乗り口にも有機的な手仕事の跡が残る。

本質を見極めて、上質な風景を創り出す

美しいフォルムの螺旋階段。床材はフランスから取り寄せた石灰岩をバーナーであぶり、ニュアンスを出している。

ステンドグラスの外光を受けて、螺旋階段の曲線が映し出される。この手すりには平滑な部分がない。施主が用意していた膨大な資料に描かれていたのは、美しい曲線の螺旋階段ばかりだった。工場で組んだ階段を確認し、ノックダウンして搬入。さらに現場で手すりを曲げながら取り付けられた。

北野の答え 選択肢を増やす「提案力」で向かい合う

施主の要望に対して誠心誠意に向かい合うこと。天井のモールディングも、微妙なカーブを何度も提案し、施主と共に検証しながら仕上げた。まずは信頼を得る。いつもそこから、北野建設の仕事がはじまる。